最近、金沢の友人と飲むと、お墓をどうするかといった話題になる。そんなことを考えないといけない歳になってきたということだろう。
私と妻は長男長女で、それぞれの家の墓を守って行かないといけない立場にある。私の父は四男坊で墓は持っていなかったが、檀家の寺に墓地を買っていた。母が亡くなった時に、父と私で墓を建てた。父も今はその墓に入っている。妻方の墓は長岡御廟にある。江戸時代からの墓とのことで、お骨を納める空きが無くなっているとのことだ。
墓参りは、いつもこの二つの墓に参る。
お墓の草むしりなどの維持費も必要だが、これからもお墓を守っていきたいと思っている。
ただ、妻方のお墓の維持は難しいと思っている。義母が亡くなったら一旦このお墓に入ってもらい、しかる後に、墓に納まっている全てのお骨を土に返して、納骨堂で永代供養墓しようと思っている。長岡御廟にある真国寺に相談してみた。50万円位かかるとのことだった。
その友人が、東京の知人が亡くなったとき、葬儀に出れなかったので、お墓にお参りしたときの話しをしてくれた。そのお墓はビルの中にあったそうだ。時代だなぁと感慨深く話してくれたことがあった。
そして今日、次のような記事を目にした。いろいろと考えさせられる。
都心の納骨堂、宗教かビジネスか 想定外の課税で裁判に
http://digital.asahi.com/articles/ASHCV4VSJHCVULFA01H.html?rm=1067 (朝日新聞)から転載
東京都港区。赤坂見附駅から徒歩数分という都心の一等地に、5階建てのモダンな建物がある。金沢市に本院がある宗教法人「伝燈(でんとう)院」が2年前に開いた「赤坂浄苑」だ。広さ400平方メートル超の敷地に、本堂や、約3700基を収容できる納骨堂を備えている。
納骨した遺族は、ホテルのロビーのようなラウンジを抜け、2~3階の参拝室へ向かう。参拝ブースは計12あり、ICカードをかざすと奥の納骨庫から骨つぼが入った「厨子(ずし)」が出てくる。生花は供えてあり、掃除もいらない。夜9時までお参りでき、都会のサラリーマンが仕事帰りに手ぶらで立ち寄れる。
永代使用料は一基150万円、毎年の護持会費は1万8千円だ。将来、護持会費が払えなくなっても、合祀(ごうし)して永代にわたり供養するという。区画の販売は仏壇・仏具大手のはせがわに委託している。売れると手数料がはせがわに入り、残りは伝燈院が建設費の借金返済に充てる。返済が滞らないよう、はせがわは一定数の販売を保証する。赤坂浄苑では、すでに区画の約3割が売れたという。
ところが、赤坂浄苑の固定資産税をめぐり、宗教法人側が想定しなかった事態が起きている。今年3月、納骨堂として使う敷地と建物の昨年度分の固定資産税などとして、計400万円余りを納めるよう東京都から求められたのだ。
地方税法は、宗教法人が宗教目的で使う土地や建物は固定資産税などを非課税にすると定めている。寺や神社のほか、墓地も非課税扱いとされてきた。伝燈院は、納骨堂も墓地と同じ非課税扱いと考えていた。しかし都は、赤坂浄苑が宗派を問わず遺骨を受け入れたり、はせがわに建物内で営業を認めたりしていると指摘し、課税に踏み切った。
これに対し伝燈院は7月、都に課税取り消しを求める訴えを東京地裁に起こした。角田徳明住職は「ほかで課税された例は聞いておらず、我々だけ課税されるのは納得いかない」と話す。「他の宗派の方も受け入れて布教するのは当然。故人のために毎日読経するなど宗教活動に使っている」という。
宗教法人が運営する納骨堂は2013年度末で約8千あり、5年前より700以上増えた。大都市圏への人口流入と高齢化を背景に、狭い敷地で多くの遺骨を収容できるビル型の納骨堂の新設が相次ぐ。
こうした新しいタイプの納骨堂が固定資産税の課税対象になるのかどうか、法律に明確な規定はない。都も「課税するかどうかは実態に応じて個々に判断している」という。伝燈院をめぐる判決が確定すれば、ほかの納骨堂への課税に影響する可能性もある。
■宗教法人の全役員が葬儀社関係者
14年に日本で亡くなった人は127万人余。10年間で2割超増えた。墓地や納骨堂の「需要」もそれだけ増えている。
厚生労働省は、民間が墓地や納骨堂を運営する場合、運営主体を宗教法人などと指針で定めている。営利に走らず、永続的な運営が望ましいとの観点からだ。そこで増えているのが、葬儀業者や墓石業者などが宗教法人と「一体化」するケースだ。
千葉市内で9月、5千基収容できる納骨堂の建設計画が持ち上がった。来年末の完成をめざす市内の宗教法人は14年春、予定地の一角に古い一軒家を購入した。だが、宗教的な外観の建物はなく、近所の男性によれば、納骨堂計画の案内板が立つまで人の出入りもほとんどなかったという。
この宗教法人は40年近く前に千葉県八千代市で設立されたが、2年前、県内にある葬儀社の社長が代表役員に就いた。今年10月時点で、宗教法人のすべての役員に葬儀社の関係者が就いている。納骨堂の予定地も、宗教法人が葬儀社から買ったものだ。
納骨堂の計画に対しては、地元の住民らから「宗教法人の実態が不透明で、十分な説明もない」として反対運動が起きている。住民側の弁護士は「活動実態がほとんどない法人を葬儀社が支配している可能性が高い。宗教法人の収入は多くが非課税になるメリットも大きいのでは」と話す。
法人の代表役員は朝日新聞の取材に、「土地、建物の取得手続きや支出は適切に対処している」などと文書で回答した。
■各地で税制優遇に着目
宗教活動へのさまざまな税制優遇に着目した動きは各地にある。
西日本の建設会社は05年、20億円近い借金を抱えて倒産した。この会社は1980年代に約1ヘクタールの霊園を開発した実績があり、その際、必要となる宗教法人を縁故を頼って取得していた。この霊園が、経営者一族を窮地から救った。
銀行は、手堅い霊園事業で融資を回収しようと、建設会社の元社長の長男が住職を務めていた寺の宗教法人に借金を負わせた。宗教法人は地元の石材業者に任せていた墓石の販売も自らやるようにして、永代使用料(1基50万~100万円程度)のほかに、墓石代(1基数十万~100万円以上)も入るようになった。
いま、この宗教法人は、墓石販売や法要など税金がかかる収益事業の売上高が年2千万~3千万円ある。加えて、永代使用料など非課税の収入が約3千万円あり、ここから借金の返済や利子の支払いをしているという。長男の住職は「霊園は建設業ほど競争がない。一生懸命に拝む姿を見せることで信頼され、墓が売れます。宗教活動に力を入れてよかった」と話す。
関西のある寺では、税制優遇を檀家(だんか)への「便益」に生かしている。寺の敷地には車50台がとめられる場所がある。駐車場なら固定資産税や駐車場代収入への税金がかかるが、税務署には、檀家らが交通安全を祈願する「境内地」だと報告している。敷地には地蔵1体とさい銭箱があり、檀家は車1台につき月1500円の「さい銭」を納める。
60代の住職は「収入は個人的には使わず、すべて将来の本堂の修繕などに備えて蓄えている。税務署は何も言いません」と話す。(佐藤秀男、松浦新)
■記者の解説 時代に合った「線引き」を
亡くなる人が増えれば、葬儀や墓にまつわるビジネスも盛んになる。経済産業省の13年の調査によると、葬儀関連市場の売上高は年間2兆円を超えた。一方で、死者を弔う行為は宗教と不可分でもある。信教の自由は守りつつ、課税に際しては、どこかで宗教とビジネスの「線引き」をしなくてはならない。
宗教法人は、信ずる教義を広め、信者を教化・育成することを主な目的とする団体と規定されている。教義や儀式を通じて社会貢献している「公益性」が税優遇の根拠のひとつだ。
だが、時代とともに「弔いのかたち」が変化していることが、宗教とビジネスの線引きを難しくしている。核家族化や家族観の多様化で、葬儀はより簡素に、墓も代々の継承を前提としないものが増え、地方では廃寺などが相次ぐ。一方、都会では伝統にとらわれない葬儀のスタイルが広がりつつある。
寺の経営に詳しい慶応大の中島隆信教授は「宗教法人を公益性の高いものとそうでないものに分け、営利型の法人には民間企業と同じ税率を課す改革が必要」と話す。収益事業の比率や、経営をチェックする外部評議員の有無などが公益性を判断する指標になりうるという。
金森