経営に失敗すれば会社は倒産し淘汰される。失敗したら早い時期に精算する。そして、再度チャレンジして出直す。この仕組こそが経済を活性化させる。
しかし、安倍政権の政策は、三本の矢と称して、失敗して退場すべき企業の延命策だけと言っていい。「東京電力」「東芝」「三菱自動車」「ジャパンディスプレイ」などが最たるものだ。また、日銀は業績とは無関係にETFで株価を買い支えている。すでに政府はGPIFを通して大企業の大株主になっている。大企業の管理職の給与を補填しているにすぎない。成功体験から抜け出せない管理職だけを高給で雇止め、柔軟な考えを持ったこれらかの若者に投資しない。
また、安倍政権は新しく夢ある技術としてリニア新幹線の推進をうたっているが、原発と同じでゾンビ企業の延命策にしかならない。(詳細は別の機会に述べたい)
東洋経済ONLINEに興味深い記事が掲載されたので紹介する。
「大胆な経済対策」の中身は、間違いだらけだ
「補正」が常態化、「成長戦略」は非効率に
http://toyokeizai.net/articles/-/131286
政府は8月2日に「未来への投資を実現する経済対策」を閣議決定した。事業規模は28.1兆円と過去3番目の大きさで安倍政権下では最大となるが、直接的な財政支出(国+地方)は7.5兆円である。また、この金額は2016年度補正予算だけでなく、2017年度当初予算も含んだものなので、GDPの押し上げ効果はみかけほど大きくないことには注意が必要だ。
完全雇用のときに財政出動は必要ない
しかし、より本質的な問題は経済効果が小さいことではない。そもそもこのタイミングで大型の経済対策が必要だったのかというところから考えるべきではないか。確かに消費税率引き上げ後の日本経済は冴えない状態が続いている。たとえば、経済成長率はこの1年間、プラスとマイナスを繰り返し、均してみればほぼゼロ成長にとどまっている。
しかし、その一方で雇用情勢は極めて良好だ。有効求人倍率は1倍を大きく上回り、失業率は完全雇用とされる3%台前半の推移が続いている。政府は「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」という景気の基調判断を維持している。
言うまでもなく日本の財政は深刻な状況にあり、大規模な財政出動を伴う経済対策には慎重であるべきだ。特に、短期間でまとめなければならない補正予算では事業の選択が場当たり的なものとなりやすく無駄な支出の増加につながりやすいことを念頭に置いておく必要がある。
経済対策によって短期的に成長率が押し上げられることは確かだが、それはあくまでも一過性のものであり、その効果が一巡した後には反動減が生じる。政策効果剥落による景気悪化を止めるためには再び経済対策を講じることが必要となり、補正予算の編成が常態化してしまう。実際、安倍政権が発足した2012年度以降、経済対策のための補正予算が毎年編成されている。これでは財政の健全化は遠のくばかりだろう。
筆者は経済対策を全面的に否定しているわけではなく、むしろ大震災やリーマン・ショックなどによって景気が急速に悪化している局面では、財政出動のための国債の追加発行を躊躇すべきではないと考えている。経済危機の際には民間部門(企業、家計)ができない借金をすることによって需要を創出することができるのは政府だけで、これこそが財政政策の重要な役割だ。しかし、労働市場が完全雇用の状態にある現在はその時ではない。
また、安倍首相は「新しい判断」によって2017年4月に予定されていた消費税率引き上げの延期を決めたが、これは4兆円を上回る減税を実施するに等しい。消費増税先送りによる減税分と合わせて考えても今回の経済対策はあまりに大盤振る舞いではないか。
予算は消化しきれていない
近年は予算が消化しきれていないという問題もある。たとえば、2011年度は東日本大震災からの復興を主な目的として、2012年度は安倍政権発足直後の大型経済対策(日本経済再生に向けた緊急経済対策)のため、補正予算で10兆円以上(一般会計ベース)が積み増されたが、両年度ともに約10兆円が未執行となった。
経済対策が策定されると決まって出てくる批判は、対策の中身が従来型の公共事業に偏っていて、中長期的に成長が期待できる分野への投資が少ないといったものだ。これは一見すると正論だが、筆者の考えはむしろ逆だ。
緊急性が高い補正予算による経済対策ではむしろ短期的な効果が高い支出に重点を置くべきで、中長期的な経済成長に寄与するような支出は本予算に盛り込むのが筋だ。今回の経済対策でいえば、子育て・介護の環境整備、同一労働同一賃金、長時間労働の是正などの働き方改革の推進は、補正予算で対応するのではなく長期的に腰をすえて取り組むべき課題だろう。
成長戦略を担うのは政府でなく民間であるべき
そもそも、政府が本当に成長分野を正確に予測できるのかという疑問もある。将来の成長産業が予測できないのは民間も同じかもしれない。ただ、厄介なのは、民間であれば失敗すると会社が倒産するなどして淘汰されるが、政府は倒産しないので非効率な投資が続けられてしまうことだ。このことが日本経済全体の成長力低下につながる恐れがある。
政府の成長戦略が不十分であることが経済の停滞が長期化している理由として挙げられることが多いが、筆者にはむしろ成長戦略が多すぎると感じられる。このことを如実に示しているのが「成長戦略」のページ数だ。
政府の経済運営の基本方針は小泉政権下では「骨太方針」、2009年民主党政権下では「成長戦略」で示され、現在の安倍政権では「骨太方針」、「成長戦略」の両方が毎年策定されている。このうち、「成長戦略」のページ数(A4判)はここ数年急増しており、2016年度版ではついに本文だけで200ページを超えた。これだけ量が多いと成長戦略の内容を理解するだけでも至難の業だろう。
経済成長の主役はあくまでも民間で、政府は民間にはできない税制や社会保障制度の改革、規制緩和の推進などを通じて民間が成長するための基盤整備にもっと注力すべきだ。経済対策、成長戦略を毎年策定しているようでは、民間需要中心の経済成長の実現は難しいのではないか。
予算は単年度主義となっており、予算によって認められた国費の歳出期限が及ぶのは原則として当年度限りで、年度内に使用し終わらない金額は国庫に返納することになっている。年度内に使用できなかった歳出予算は一定の条件を満たせば翌年度に繰り越すことができるが、2011、2012年度ともに約3兆円は不用額となり結局使われないままとなった。2013年度以降は補正予算の規模の縮小に伴い未執行額も小さくなったが、それでも補正額を上回る未執行額が毎年発生している。執行額を大きく上回る予算を毎年のように組むことは極めて非効率である。
金森
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