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黒田日銀総裁は素直に「敗北宣言」を

  • 時事

意地や見栄で追加金融緩和を行い、より悪い方向に経済や景気を進めることは、日銀としては決して行ってはいけない行為だ。黒田総裁は率直に「敗北宣言」を。

アベノミクスは完全に失敗している。アベノミクスに安倍晋三首相が言う第2ステージなどない。そもそも、いままでの三本の矢はどこにいったのか、国民を騙す詭弁はいい加減にしてもらいたい。

次に、JBpressの記事を転載して紹介する。

黒田日銀総裁は素直に「敗北宣言」を

バズーカの限界は明らか、新たな方針が今こそ必要

2015.9.24(木) 鷲尾 香一
日銀、2%インフレ目標導入 無期限の金融緩和策も

日銀の追加金融緩和を求める声は根強い。しかし、これ以上の金融緩和には経済・景気に対する好影響は望むべくもない。(資料写真)〔AFPBB News

 9月10日、自民党の山本幸三衆議院議員はブルームバーグとのインタビューで「10月30日の日銀金融政策決定会合は、追加金融緩和のいい機会だ」と述べた。山本議員に象徴されるように、日銀の追加金融緩和を求める声は根強い。

 9月14、15日の日銀金融政策決定会合前も、市場関係者の中には追加金融緩和を期待している向きがあった。しかし、日銀は現状の金融政策の維持を決めた。むしろ、景気判断では新興国経済の減速により、「輸出や鉱工業生産が横ばい圏内の動きとなっている」とし、判断を一部下方修正した。だた、この景気判断の一部下方修正が10月の追加金融緩和期待を高める結果にもなった。

10月の展望レポートが追加金融緩和の引き金に?

 黒田東彦日銀総裁は、就任時の2013年4月、「2年程度を念頭に消費者物価の上昇率を2%にする」という物価安定目標を打ち上げた。しかし、実際にはその実現目標は「2年程度を念頭」から「2015年度を中心とする期間」に、そして「2016年度前半頃」と、どんどん後ずれしており、2%の実現すら危ぶまれている状況だ。

 10月30日の金融政策決定会合では、半期に1度の「経済・物価情勢の展望」(いわゆる展望レポート)の見直しを踏まえて、政策決定が行われる。この展望レポートでは、前回7月の展望レポート時の経済・物価見通しを下方修正する可能性が高いと見られている。そのため、10月30日の決定会合では、展望レポートの経済・物価見通しの下方修正を受け、追加金融緩和が実施されるだろうというのが、市場関係者の多くが持つシナリオとなっている。

 今のところ、日銀内部には追加金融緩和を実施しようとする動きはない。しかし、2014年10月に追加金融緩和を実施した際には、黒田総裁はその直前まで「景気や物価の基調は順調」と言い続けていた。

 黒田総裁は、参議院財政金融委員会の参考人陳述で「物価は順調に目標に向かって進んでいる」と述べた3日後に追加金融緩和を行ったため、後日、「国会に遊びに来てもらっているわけではない」と参院議員から批判を浴びている。金融緩和はサプライズが大きいほど効果があると言われる。したがって、国会という国政の最高決定機関の場での意見陳述で、追加金融緩和を事実上否定した後だっただけに、この時の金融緩和は市場に大きなサプライズを与えた。

 だが、金融緩和は回を重ねるごとにその効果が薄れていくことは、金融先進国である米国の研究で証明されている。日銀が10月に追加金融緩和を実施するとすれば、すでに市場はそれを予想しており、サプライズは少ない。思った通りの効果を上げられるかは、いささか疑問だ。

 当初の量的・質的金融緩和(いわゆる異次元緩和)は、確かに金利の低下を促し、「デフレ経済から脱却できるのではないか」「景気が回復するのではないか」と人々のマインドを転換し、期待を醸成することに成功した。しかし、現状では新興国(特に中国)経済の先行き不透明感の強まりにより、この期待感が薄らぎ始めており、金融政策による期待の醸成には限界があることが鮮明になってきている。

サプライズは望めない追加金融緩和

 もし、次の追加金融緩和でサプライズを与えるとするならば、市場が予想している以上の量的(額)の追加緩和を打ち出すことである。

 だが、もはや国債の買い増しは不可能に近い。すでに、市場金利は限界点近くまで低下しており、国債市場は日銀の大量買入により、市場機能を失っている。市場金利がマイナス金利になるほど、国債の買い増しを行えば、現在ですら困難だと言われている金融緩和の終了時における国債の処分等(いわゆる出口戦略)が一層困難になるだろう。

 ETF(上場投資信託)の買い増しも考えられるが、すでに年間3兆円ものETFを日銀は購入しており、ETF市場に占める日銀の保有比率が高まっている。笑い話のような話だが、日銀が購入するETFは優良企業の組み入れ比率が高いため、9月末の決算時点で日銀が事実上の大株主になっている優良企業が多く出てくると見られている。

 結果的に、企業が進めているROE(株主資本利益率)経営に基づく株主還元の向上は、日銀やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のために行われているという本末転倒になりかねない。それよりも、日本を代表するような企業で、日銀やGPIFのような準政府機関が大株主になるのは、まるで中国やロシアといった資本主義の遅れた国家体制のようなものだ。

これ以上の金融緩和は悪影響の方が大きい

 確かに、異次元緩和による円安は、輸出企業の為替差益をもたらした。しかし、一方では円安による輸入物価の上昇も引き起こしている。特に、円安は原油安を相殺してしまうため、これ以上の円安は、輸出の為替差益という好影響よりも、円安による原油高という悪影響の方が大きくなり、日本経済に悪影響を与える可能性が大きい。

 つまり、これ以上の金融緩和には、市場が期待するほどの経済・景気に対する好影響は望むべくもない。むしろ、悪影響の方が大きいと言える。

 黒田総裁は、異次元緩和により、「2年程度を念頭」に消費者物価上昇率を2%にすると言ったが、その目標も達成できていない。それでも、この錦の御旗を下さないのは、それが日銀の敗北宣言につながるからだろう。

 しかし、意地や見栄で追加金融緩和を行い、より悪い方向に経済や景気を進めることは、日銀としては決して行ってはいけない行為だ。黒田総裁は率直に「敗北宣言」を行い、現状の金融緩和の限界を素直に認めた上で、日銀としての新たな方針を打ち出すことが肝要な時期に来ているのではいないか。


金森

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