菊の花を生けた。毎年、この季節になると、必ず生ける決まった様式の生け花である。菊の花と言うと、どうしても仏壇やお墓をイメージしてしまい、菊の花が好きだと言う人は少ない。花が大好きな私も、普段は好んで菊の花を買おうとは思わない。もっと、可憐で美しい花はいくらでもあるし、最近のおしゃれな花屋さんでは、むしろ菊を置いていないお店もある。
しかし、相応の空間と花器、そして生ける人の技量があれば、菊という花の存在感は卓越していると思う。大輪の菊は美しいというだけでなく、荘厳で気高く気品のある空間を創り出す。大輪の菊にはその気高さに見合った空間が必要なのだ。その気高さにそぐわない空間に無造作に入れられた菊は、なんとも野暮な花と成り下がってしまう。
バラや蘭といった華麗な花は、ガラスコップに一輪挿すだけで美しいけれど、菊はガラスコップには似合わない。輪島塗の花生けや九谷焼の花瓶、清水焼の大水盤といった格調のある入れ物が似合うのだ。
相応の空間、相応の入れ物、相応の技術の三拍子が揃って初めて、菊の美しさを最大限に引き出すことが出来る思う。なんとも、菊という花は世話のやける花ということかもしれない。
思うに、私たちが生活している空間に、菊が似合う空間が少なくなっている。私の生けた菊も置き場所は事務所のカウンターの上。多分、似合う場所はもっと別のところにある気がする。
菊
Track Back [1]
敬老の日の贈り物 - 花瓶 - 九谷焼, 信楽焼, 高岡銅器
「敬老の日」特集、第5回目です。 今回は、「花瓶」に焦点を当てました。 花瓶はそれ自体が芸術作品として発展してきました。芸術的に優れた花瓶は、花がない状態... 続きを読む
Comment [1]
No.1kokkoさん
なるほど、菊は凛とした格調のある花ですね。
良く分析していらっしゃいますね。
お墓参りとか法事のときしか買わないし、普段は除けて買いますね。
活けるのはちょっと?という感じです。
でも事務所に相応しくエレガントで品のある活け方をされていて、参考になりました。
コメントする