黒部から国道8号線を富山に向かって魚津辺りを左手に折れる。少し走ったところに北山鉱泉という慶応3年に開湯したという湯治場がある。
慶応元年春、松倉村北山 仁右衛門夫婦に玉のような男の子が生まれました。しかし妻まつは産後の肥立ち悪く、床に伏しておりました。
月日は流れ、慶応三年八月、まつの夢枕に薬壺を抱えた薬師如来が現れ、霊泉へと案内、「これを沸かし薬とせよ」とのお告げを授かりました。
仁右衛門夫婦は仏力に導かれお告げの通り霊泉を掘り当て湯を用い治療に励んだところ、腰が立ち歩行ができやがて別人のように全快しました。
この霊験は四方に響き渡り、近国・遠国より湯治を求めて人々が訪れるようになり、その薬効は、子宝、産後だけでなく、リュウマチ、神経痛、中風、脊髄等の成人病、胃腸病、脚気、病後の養生など、さまざまな病に効き、湯小屋として賑わいました。
また、一粒種の男の子はこの湯水ですくすくと大きく育ち、やがて「力岩」の襲名を称し相撲界で活躍、明治相撲にその名を残しました。
その後、力岩は自分の出生が不思議な霊験に由来することから仏神を尊崇、仏の道へと入り、寺を開山すると湯治客の宿泊を受け努めました。その後も諸病平癒の湯として宿泊湯治の客足は絶えることなく、やがて旅館へと栄え今日のいけがみに至っております。(いけがみHPから引用)
この北山鉱泉に「いけがみ」という三姉妹の家族でやっている温泉旅館がある。料理は美味いと評判だったが、狭い部屋にコタツがあってトイレは共同という湯治場そのものといった旅館だった。そんな湯治場旅館だったので二の足を踏んでいた。
ところが最近改装したようで随分と綺麗になっていた。そこで、「ふるさとわり」を使って三姉妹に会いに行くことにした。
「いけがみ」は評判通りで、料理も美味しく、富山湾の幸、山の幸、魚津米のご飯やお吸い物、味噌汁と富山の幸を堪能した。知らなかった富山の地酒をいろいろと飲み比べることもできた。石川の酒も美味しいけど、富山の酒も格別に美味かった。
そういえば、帰りに三姉妹の連れ合いの一人が駐車場まで送ってくれた。彼はニ・三年前までは野々市の近くで、能美市にある白山カントリー倶楽部の隣りの東芝の工場に勤めていたそうだ。嫁が旅館を継ぐのに一緒にやろうと頼まれて北山に来たとのことだった。予約のときに野々市とあったので嬉しくなったと話してくれた。世の中は狭いものだ。
金森
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