私は11歳8カ月になる雌犬のラブラドールレトリーバーを飼っている。名前はココア。この子が一年少し前から後ろ脚を引きずり出した。獣医さんの診断では加齢による関節炎で完治は難しいとの事。ドックフードを関節によいものに変え、サプリメントを与えて、あまりに痛そうな時には鎮痛剤で過ごしてきたが、症状は少しずつ悪いほうに向かっている。
話は飛ぶ。私自身のことである。4月の終わりごろだったと思う。庭で草抜きをしていて腰が痛くなった。そんなことはいつもの事なので少し休めば治ると高を括っていたが今回はそうはいかなかった。1ヶ月以上経っても治ることはなく、整形外科、外科、内科、接骨院と渡り歩いたが特別な原因は見当たらず治療も効果がなかった。「腰痛難民」という言葉が頭に浮かんでいたそんな時鍼治療を勧められた。自宅からは通院に2時間近くかかるが、腰痛では間違いなく名医だという鍼灸師を紹介され、施術を受けることになった。すると1回目の施術で痛みが三分の一になった。3日後の2回目でほぼ完治した。鍼は生まれて初めての経験だったが東洋医学の神秘に感動した。
それで話は戻る。犬の鍼治療と云うのを何かで聞いたことがあった。もしかしたらココアの関節炎にも鍼治療が効果的かもしれない。私はネットで検索してみた。すると、意外にも鍼治療を行っている動物病院はたくさんあった。いちばん近い動物病院に電話すると、先ずは診察して鍼治療が可能か判断すると言う。すぐにココアを車に乗せて診察に向かった。問診、触診の後、獣医さんが言った。
「効果があるかどうかはわかりませんがやってみましょう。全然効果が出ない場合もあるし、激的によくなることもあります。先ずはこの子が鍼を打たせてくれるかどうかが一番の問題なのですけど・・・」
思いの外後ろ向きのコメントに若干の不安が芽吹いたが、ココアの足が少しでも楽になる可能性があるということであればと施術の予約を入れた。
予約当日、ココアを連れてその動物病院に出掛けた。予想通りではあったが診察室に入るとココアはいつもと違う状況に興奮し、落ち着きをなくしてゴソゴソ動き回った。診察台の上は途中で暴れ出しでもしたら危ないので床に伏せさせて施術してもらうことにした。もともと大人しい子ではあるが体重32キロの大型犬であるココアを動かないように支える私は結構キツかった。
下半身、背骨の指一本両外側に6本、しっぽの付け根付近両側に2本、ひざ関節に4本全部で12本の鍼が打たれ電極がつながれて微電流を流す。そして、その状態で約20分待つ。これが一通りの手順だった。
治療が終わり解放されると、ココアは痛みのせいでいつも浮かせ気味だった左後ろ脚をしっかり床に着つけて立った。鍼治療の効果だと思って嬉しくなった。帰宅してからも1時間ほどは痛みを感じさせない動きをしていた。しかし、その状態はそれ以上長く続かなかった。
後で思えば、慣れないことに興奮状態で痛みを忘れていたのかもしれない。素人考えではあるが、微電流が流れたことによる鎮痛効果だったのかも、いずれにしろ1~2時間の効果なら残念な結果という事だろうと思う。結局ココアの鍼治療は私の腰痛の場合のような効果はなかった。
辰己(有本)
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