一つ前の記事「マイナス成長が明確に示す経済政策の根本的誤り」でアベノミクスへの懸念を書いた。タイミングを合わせるかのように、次の日から日本の株式市場で暴落が始まった。
株を持っている訳ではないので、株の暴落は日々の生活には関係ないと考えている人も多いと思う。ところが、いまでは政府は、国民の年金資金の多くの部分を株式で運用し始めている。アベノミクスを厚化粧して失敗を誤魔化してきたとも言える。また、日銀は多額の株式(日経平均(ETF)という株式)を買い入れている。いまや、これらでの運用損失は税金や年金額に跳ね返ってくる仕掛けになっている。関係ないとは言ってられない。
今日(2015年08月25日)の東洋経済ONLINEの記事が今後の見通しの参考になると思うので、転載して紹介する。(要するに、そうは簡単には回復しない。むしろダラダラと下げることになるだろう)
日本株の本格的な戻りはいつになるのか
日経平均733円安、ついに1万8000円割れ
http://toyokeizai.net/articles/-/81714
上値の重さが鮮明になったマーケット
乱高下のあと、結局は上値の重さが鮮明になった――。25日の日経平均株価は結局大幅に続落、前日比733円安の1万7806円で引けた。
24日の海外市場では、米国株が大幅安となり、ダウ平均株価は寄り付き後に一時1000ドルを超える下げ幅となるなど、2014年2月以来の水準に落ち込んだ。25日の国内株式市場も大きく下げ、午前の日経平均は1万7747円まで続落。その後は買戻しや押し目買いなどが入り、一時は1万8835円まで急速に値を戻した。だが、中国株が軟調に推移したことから、引けに掛けては再び大きく売られた。
結論から言えば、このあとはしばらくレンジ相場での上値の重い展開が続くことになりそうだ。基本は「戻り売り」であり、場合によっては再度大きく下げる「深押し」の可能性もまだ残っている。
25日の値動きを見る限り、株式市場の需給悪化は筆者の予想以上である。依然として上海株の影響を受けていることや、戻り高値から大幅に下げて取引を終えたことも、市場センチメントが弱気に傾いていることの証拠だ。
「移動平均線からのかい離率の大きさ」や「空売り比率の高さ」から、いったんは上昇すると見て短期筋が買い戻しに走ったことなどで、前場は急速に値を戻した。だが、こうした短期的な取引だけでは戻り基調に転じるのは困難である。
もちろん、今後の相場は一時的には戻りを試す局面もあるかもしれない。だがこれほどまでの大幅下落となった以上、本格的な反転は先になりそうだ。市場の想定を上回る大がかりな政策出動があれば別だが、今後数カ月間、調整基調が続くことも覚悟する必要がある。
株価が反発しても、「下落途中の一時的な戻り」
24日のコラム「895円安の日経平均、今後のポイントは何か」でも解説したように、今月末、12カ月移動平均線の位置する1万8500円前後を割り込んで引けると、調整が長期化する可能性が高い。そうなれば、当面はレンジ内で上下に振れる値動きの荒い展開ながら、上値の重い展開が続くことになろう。
もし読者が個人投資家であれば、以下のことに気をつけていただきたい。26日以降の相場は、時として、買戻しを伴って急激に値を戻す局面もありそうだ。個人投資家がそのような場面に出くわすと、「株価調整は終了した」との見方から、戻り高値の局面で株を買いたくなるものだ。
だが、下落基調の局面では、いったん値が戻っても、相場は急落しやすく、買った価格よりも安値で売ることになりかねない。こうした取引を繰り返すと、あっという間に損失が積み上がる。
すでに、米国株や上海株などの価格は、日本株に先行する形ですでに12カ月移動平均を大幅に下回っており、中期的な下落基調入りがほぼ確定している。日本株だけが上値を試すことはほぼ不可能である。長期トレンドが崩れた際には、回復に時間が掛かるということであり、取引はきわめて慎重に行うべきだ。
当面の大きな焦点の一つは、米国FRB(連邦準備制度理事会)の利上げがあるかどうかである。当初は9月17-18日のFOMC(公開市場委員会)で行われるとの見方が有力だったが、中国を中心とする新興国経済の予想以上の減速に、利上げの先送り観測が高まっている。
米国の利上げ見送りが一段の日本株安を招く懸念
今後、先送り観測が高まれば、一段のドル安につながる可能性がある。このドル安は円高への巻き戻しを引き起こし、日本の輸出企業の業績下方修正を連想させ、日本株の重石となりかねない。また株安の一因となってきた原油相場で安値更新の動きが止まらない点にも、注意が必要だ。
すでに本欄でも、ブレント原油が夏場に年初からの安値を更新すると、年末に掛けてさらに安値を切り下げる傾向が強いことを指摘した。WTI原油先物は40ドルの節目を明確に割り込んでいたが、ついにブレント原油も年初来安値を更新した。OPEC(石油輸出国機構)による減産の可能性が低いなか、原油価格の一段の下落がさらに株価を押し下げるリスクがある点にも注意したい。
また金相場が下落し始めた場合には、さらに注意を要する。つまり、投資家が株式投資で大きな損失を出した場合、その損失の穴埋めに利益の出ている資産の売却を進めることがある。投資家にとって、金は利益が出ている数少ない資産となっている可能性がある。その金までも売られるようだと、投資家の資産の痛みは深刻であると判断せざるを得ない。
市場では、株価急落で「政策当局への催促相場に移行した」との声も聞かれる。株価の押し上げと円安が基本戦略だった安倍政権にとって、支持率が低下する中、今回の株安は相当の痛手となっていることは想像に難くない。
だが、今回の株安が中国などの外部要因に端を発していることもあり、国内の追加的な政策だけで株価を大きく押し上げ、円安に誘導するのは困難である。安倍首相と黒田日銀総裁の「アベクロ会談」の緊急開催もささやかれるが、株価への影響は限定的なものになろう。
今後、中国政府が景気対策などを講じる一方、海外での政策対応により一時的に株価は戻すかもしれない。しかし、それが底打ちにつながるほど現在の株式市場の需給は改善していないだろう。公的年金による買い余力も大幅に低下する中で、安倍政権や日銀はどう動くのか。
追記 2015.8.25
週刊ポスト最新号では「SMBC日興証券が強気予想!日経平均が3万円を越えるこれだけの根拠」しかたないけど間抜けな記事だ。こんな珍事も暴落時にはよくある話だ。
金森
コメントする