齧りかけの林檎(かじりかけのりんご)
ガラス細工にも似た繊細な少年期から、肉欲に翻弄されて悶え苦しむ青春期、生の哀しみがよどみ溜まりいく壮年期、そして、哀しみの淵に追い込まれ、そこから不死鳥のように甦る老年期の新生への予感までを真摯なタッチで描く感動作。
生きることに疑いを抱き、手応えのある生を求めて最後に辿りいたところには......?
幼い心にふと湧き上がった母への疑い、少年期への目覚めを描く「花の首」「樹下の骨」。社会への不信と性への渇望、熱く猛々しい血肉に翻弄されて未来に旅発つ青年の姿「囓りかけの林檎」「停車場」。世の片隅にけなげに生きる者への共感と反省「潤んだ目」「シャクナゲ」。
生きることの哀しみの中から愛を見い出し、信仰への問い掛け「黒い向日葵」「ウルビーノ・風の声」。老いの嘆き、その絶望から甦る新生への願いを描く「老樹」「滅鬼の桜」。富山の美しい自然を中心とした十編。
ISBN978-4-902182-10-1
香積 響 著 四六判322頁
発行 オブアワーズ
定価 1470円(本体1400円+税)
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