http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001yj85-att/2r9852000001yjdf.pdf
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「在宅医療の体制構築に係る指針」の骨子
第1 在宅医療の現場
1.在宅医療のニーズの高まり
(1)人口の高齢化
(2)疾病構造の変化
(3)在宅で実施可能な医療の拡充
2.在宅医療を支える機関
(1)退院支援
(2)日常の療養生活の支援
(a) 訪問診療・往診
(b) 訪問看護
(c) 訪問歯科診療
(d) 訪問薬剤管理指導
(e) 多職種協働(医療・介護の連携)
(f) 在宅医療連携拠点
(3)急変時の対応
(4)在宅における看取り
1.目指すべき方向
前記「第1在宅医療の現状」を踏まえ、個々の医療機能、これを満たす関係機関、関係者の連携等により、在宅医療が円滑に実施される体制を整備する。(1)円滑な在宅療養移行に向けての退院支援が実施可能な体制
- 入院機関と、在宅医療の受け皿になる関係機関の協働による退院支援の実施
(2)生活の場における療養支援が可能な体制
- 多職種協働による患者・家族の生活の視点に立った医療の提供
- 地域における在宅医療に対する姿勢や原則の共有
- 緩和ヶアの提供
- 介護する家族の支援
(3)急変時の対応が可能な体制
- 在宅療養中の患者の後方ベッド機能の確保
(4)患者が望む場所での看取りが実施可能な体制
- 住み慣れた自宅や地域での看取りの実施
2.各医療機能と連携
前記「目指すべき方向」を踏まえ、在宅医療提供体制に求められる医療機能を下記(1)から(4)に示す。都道府県は、各医療機能の内容(目標、関係機関等に求められる事項等)について、地域の実情に応じて柔軟に設定する。(在宅医療連携拠点)
(1)から(4)までに掲げる目標の達成に向けて、地域の実情に応じ、病院、診療所、訪問看護ステーション、地域医師会等関係団体、保健所、市町村等の主体が在宅医療の連携拠点となり、多職種協働による包括的かつ継続的な在宅医療の提供体制の構築を図り、下記のような機能を担う。
- 地域の医療・介護関係者による協議の場を定期的に開催し、在宅医療における連携上の課題の抽出及びその対応策の検討等を実施すること
- 地域の医療・介護資源の機能等を把握し、地域包括支援センター等と連携しながら、退院時から看取りまでの医療・介護にまたがる様々な支援を包括的かつ継続的に提供するよう、関係機関との調整を行うこと
- 質の高い在宅医療をより効率的に提供するため、24時間体制を構築するためのネットワーク化やチーム医療を提供するための情報共有の促進を図ること
- 在宅医療に関する研修及び普及啓発を積極的に実施すること
(1)円滑な在宅療養移行に向けての退院支援が実施可能な体制
(a) 目標
- 入院機関と、在宅医療の受け皿になる関係機関の円滑な連携により、切れ目のない継続的な診療・ケア体制を確保すること
(b) 関係機関に求められること
(病院・有床診療所等)
- 退院支援を担う人材を配置すること
- 退院支援担当者は、できる限り在宅医療・介護を担う関係機関での研修・実習を受けること
- 入院初期から、退院後の生活を見据えた退院支援を開始すること
- 退院支援の際には、患者の日常医療圏に配慮した在宅医療・介護サービスの調整を心がけること
- 退院後起こりうる事態とその対応について等、退院前カンファレンスや文書・電話等で、在宅医療を担う関係機関との情報共有をしっかりと図ること
(在宅医療連携病院・診療所※)
※自らも在宅医療を提供し、かっ、他の医療機関の支援も行いながら、医療や介護の現場での多職種連携の支援を行う病院・診療所。
- 病院・有床診療所等の退院支援担当者に対し、地域の在宅医療資源に関する情報提供や患者の在宅療養の視点からの助言を行うこと
- 在宅での療養に移行する患者にとって必要な医療・介護の資源が十分確保できるよう、関係機関に働きかけること
(在宅医療を担う関係機関)
- 在宅療養中の患者のニーズに応じて、相互に連携して医療と介護を包括的に提供できるよう、調整すること
- 在宅医療・介護の担当者間で、今後の方針や病状に関する情報や計画を共有し、連携すること
- 高齢者のみではなく、小児や若年の訪問診療、訪問看護等にも対応できるような体制を確保すること
- 病院・有床診療所等の退院支援担当者に対し、地域の在宅医療資源に関する情報提供や患者の在宅療養の視点からの助言を行うこと(再掲)
(c)関係機関の例
- 病院・有床診療所
- 介護老人保健施設
- 在宅医療連携病院・診療所
- 在宅療養支援病院・診療所
- 在宅医療を担う病院・診療所
- 薬局
- 訪問看護ステーション
- 居宅介護支援事業所
- 地域包括支援センター
(2)生活の場における療養支援が可能な体制
(a)目標
- 患者の疾患、重症度に応じた医療(緩和ヶアを含む)が多職種協働により、できる限り日常医療圏内で継続的、包括的に提供されること
(b)関係機関に求められること
(在宅医療連携病院・診療所)
- 医療機関(特に一人の医師が開業している診療所)が必ずしも対応しきれない医師不在時や夜間の診療のサポートを行うこと
- 地域包括支援センター等と協働しつつ、自立支援や家族の介護負担軽減につながるサービスに適切な紹介を行うこと
- 在宅医療に従事する医療・介護関係者に必要な基本的知識・技能に関する研修の実施や情報の共有を行うこと
- 卒後初期臨床研修制度(歯科の場合、卒後臨床研修制度)における地域医療研修において、在宅医療の現場での研修を受ける機会等の確保に努めること
- 災害など有事の際にも適切な医療を提供するための計画(人工呼吸器等の医療機器を使用している患者の搬送等を含む)を策定し他の医療機関等の計画策定等の支援を行うこと
- 在宅医療を担う関係機関は、相互の連携により日常生活圏域で患者のニーズに対応した医療と介護が包括的に提供される体制の確保に努めること
- がん(がんの緩和ケア体制等)、認知症(周辺症状のみならず、身体合併等に初期対応や専門医療機関への適切な紹介を行うこと)等、それぞれの疾患の特徴に応じた在宅医療の体制を整備すること
※がん患者の在宅医療については、がんの医療体制構築に係る指針を参照。
※うつ病患者、認知症患者等の精神疾患患者の在宅医療については、精神疾患の医療体制構築に係る指針を参照。 - 災害など有事の際にも適切な医療を提供するための計画(人工呼吸器等の医療機器を使用している患者の搬送等を含む)を策定すること
- 医薬品(麻薬や無菌調製を必要とする医薬品を含む)や医療材料・衛生材料等の供給を円滑に行うための体制を整備すること
(c)関係機関の例
- 在宅医療連携病院・診療所
- 在宅療養支援病院・診療所
- 在宅医療を担う病院・診療所
- 薬局
- 訪問看護ステーション
- 居宅介護支援事業所
- 地域包括支援センター
(3)急変時の対応が可能な体制
(a)目標
- 在宅療養中の患者の症状急変時に対応できるよう、在宅医療を担う病院・診療所、訪問看護ステーション及び入院機能を有する病院・診療所等との円滑な連携による診療体制を確保すること
(b)関係機関に求められること
(在宅医療を担う関係機関)
- 在宅療養中の患者の急変時の連絡先をあらかじめ患者や家族に提示し、また求めがあった際に2 4時間対応できる体制を確保すること24時間対応が自院で難しい場合も、近隣の病院や診療所、訪問看護ステーション等との連携により、その体制を維持すること
- 急変時のために、あらかじめ入院が可能な医療機関との連携を図っておくこと
- 在宅療養中の患者の急変時における対応については、地域の消防関係者と協議し、症状や状況に応じて搬送先として想定される病院について確認し合うこと
(在宅医療連携病院・診療所)
- 在宅療養中の患者の病状の急変等、医療機関(特に1人の医師が開業している診療所)が必ずしも対応しきれない場合のサポートを行うこと
- 入院機能を有する在宅医療連携病院・診療所については、急変時の在宅療養中の患者の一時受入れ等を行うこと
- 重症で対応できない場合は、他の適切な医療機関と連携する体制を構築すること
(急変時の受入れを行う病院・有床診療所等)
- 普段から連携している医療機関(特に無床診療所)が担当する在宅療養者の病状が急変した際には、一時受け入れ等を行うこと
- 重症で対応できない場合は、他の適切な医療機関と連携する体制を構築すること(再掲)
(c)関係機関の例
- 在宅医療を担う病院・診療所
- 在宅療養支援病院・診療所
- 訪問看護ステーション
- 在宅医療連携病院・診療所
- 急変時の受け入れを行う病院・有床診療所
- 介護老人保健施設
(4)患者が望む場所での看取りが実施可能な体制
(a)目標
- 住み慣れた自宅や地域等、患者が望む場所での看取りを行うことができるよう支援すること
(b)関係機関に求められること
(在宅医療連携病院・診療所)
- 地域住民に対し、療養生活の質を向上させる選択肢としての在宅における緩和ケアおよび看取りについて情報を提供すること
- 医師、歯科医師、薬剤師、看護職員、ケアマネジャー、訪問介護職員等に、終末期の苦痛の緩和や看取りのケアの手法等に関する情報提供や研修を実施すること
(在宅医療を担う関係機関)
- 患者、家族に対して、居宅等で受けられる医療、ケアおよび看取りに関する適切な情報提供を行うこと
(入院先となる病院・有床診療所)
- 必ずしも在宅医療を担う関係機関で対応できない終末期の在宅療養患者については、入院機能を有する病院・有床診療所等で必要に応じて受け入れること
(c)関係機関の例
- 在宅医療連携病院・診療所
- 在宅療養支援病院・診療所
- 在宅医療を担う病院・診療所
- 訪問看護ステーション
- 入院先となる病院・有床診療所
第3 構築の具体的な手順
(医療計画全体の見直しの方向性に沿って作成)
1.現状の把握
都道府県は、在宅医療提供体制を構築するに当たって、患者動向、医療資源及び医療連携等について、次に掲げる項目を参考に情報を収集し、現状を把握する。特に在宅医療を提供する病院・診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護施設、訪問介護事業所等の日常生活圏域で患者のニーズに対応した医療と介護が包括的に提供される体制の確保を行い、カバー範囲を可視化して、検討することが推奨される。
(1)患者動向に関する情報
検討中
(2)医療資源一連携等に関する情報
検討中
(3)指標による現状把握
(1)及び(2)の情報を基に、別表に掲げるような、病期・医療機能ごと及びストラクチャー・プロセス・アウトカムごとに分類された指標により、地域の医療提供体制の現状を客観的に把握し、医療計画に記載する。その際、全都道府県で入手可能な必ず把握すべき指標(必須指標)と、独自調査やデータ解析等が必要となるが把握する必要性が高い指標(推奨指標)に留意して、把握すること。
2.医療機能の明確化および圏域の設定
(1)都道府県は、在宅医療提供体制を構築するに当たって、「第2 関係機関とその連携」を基に、前記「1 現状の把握」で収集した情報を分析し、各区分(円滑な在宅療養移行に向けての退院支援・生活の場における療養支援・急変時の対応・患者が望む場所での看取り)に求められる医療機能を明確にして、圏域を設定する。
(2)医療機能を明確化するに当たって、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの施設が複数の機能を担うこともあり得る。逆に、圏域内に機能を担う施設が存在しない場合には、圏域の再設定を行うこともあり得る。
(3)圏域を設定するに当たって、在宅医療の場合、医療資源の整備状況や介護との連携のあり方が地域によって大きく変わることを勘案し、従来の二次医療圏にこだわらず、できる限り急変時(重症例を除く)の対応体制や医療と介護の連携体制の構築が図られるよう、地域の医療・介護資源等の実情に応じて弾力的に設定する。
(4)検討を行う場合は、地域医師会等関係団体、在宅医療・介護に従事する者、住民・患者、市町村等の各代表が参画する。
3.連携の検討
(1)都道府県は、在宅医療提供体制を構築するに当たって、円滑な在宅療養移行に向けての退院支援・生活の場における療養支援・急変時の対応・患者が望む場所での看取りまで継続して医療が行われるよう、また、関係機関の信頼関係が醸成されるよう配慮する。
さらに、在宅医療・介護の関係者および地域医師会等関係団体は、診療技術や知識の共有、連携する医療・介護の関係機関等との情報の共有に努める。
(2)保健所は、「地域保健法第4条第1項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針」(平成6年1 2月1日厚生省告示第3 7 4号)の規定に基づき、また、「医療計画の作成及び推進における保健所の役割について」(平成1 9年7月20日健総発第0720001号健康局総務課長通知)を参考に、医療連携の円滑な実施に向けて、地域医師会等関係団体と連携して医療機関相互の調整を行うなど、積極的な役割を果たすこと。
(3)医療計画には原則として、各医療機能を担う機関の名称を記載する。
なお、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの医療機関が複数の機能を担うこともある。
さらに、関係機関の名称については、例えば圏域内に著しく多数の関係機関が存在する場合など、地域の実情に応じて記載することで差し支えないが、住民に分かりやすい周知に努めるものとする。
(以下、医療計画全体の見直しの方向性に沿って作成)