現役の頃、人工知能関連製品の開発に従事していたことがある。当時勤めていた会社の研究所では地下鉄の制御システムの一環として推論システムを開発していた。当時、本社の製品企画部署から、この推論システムをビジネス向けにしたシステムを開発して欲しいとの要請を受けた。ひょんなことから、私がその製品の開発担当となった。
一般的なコンピュータシステムは、人間がコンピュータに与えたロジック通りに計算し結論を出す。一方、推論システムは、「風が吹けば桶やが儲かる」的な断片的な知識に確信度といういい加減さを加味する。断片的知識を蓄えていき、それら知識の連鎖で結論を出していく。だから、作ったシステムが正しく動いているかどうか分からないという笑えない話で悩んだこともある。
新しい製品を開発するには、製品の基本仕様も含めた販売計画書を作り、工場幹部の審査でGOが出てから開発ということになる。先ずは開発計画書を作らないといけないのだが、推論システムなど右も左も分からない。制御用推論システムを作っている研究所に通い詰めて、基本仕様をまとめ開発計画書を必死になって書いた。はっきりとした仕様も決めていない内に、研究所に訪れる大手自動車メーカーに推論システムを説明しないといけないとか、大変な思いをした。そうこうしてまとめた推論方式だが、社内論文誌に論文を投稿したら銅賞を受賞し、賞状やメダルを貰った。これには少し驚いた。関連して国内外の特許も取った。
開発した製品は、晴海で開催されていたデーターショーやビジネスショーなどにも出展した。この製品を皮切りに、専門家の知識を獲得する仕組みの製品開発部門として、所属していた部もAI部と名称が変更されもした。当時は他社も同じようなシステムを開発していた。人工知能(AI)は世の中のトレンドでもあった。30年程前の話である。
そして、先日3月11日にGoogleの人工知能「AlphaGo」が世界の囲碁チャンピオンを破ったとのニュースを目にした。人工知能という言葉に、当時のことが思い浮かんだりと、感慨深いものがある。
囲碁チャンピオンを打ち破ったGoogleの人工知能「AlphaGo」を作った天才デミス・ハサビスが人工知能を語る
http://gigazine.net/news/20160311-demis-hassabis-talk-ai/
金森