先の国会で自民党・公明党は、憲法違反の戦争法を国会のルールを無視して強行に可決成立させた。
この国会審議を通して、自民党や公明党は立憲主義を踏みにじり、国民主権をもないがしろにする政党であることがハッキリとした。
そんな中、自民党副幹事長の西田昌司氏は「そもそも国民に主権があることがおかしい」と発言している。とんでもない発言だが、自民党の考え方、本音を端的に表わしている。
西田 昌司(にしだ しょうじ、1958年(昭和33年)9月19日 - )は、日本の政治家。自由民主党所属の参議院議員(2期)、自民党副幹事長、自民党京都府連会長、きょうと青年政治大学校事務総長、自民党税制調査会幹事。(ウィキペディアから引用)
こういった発言をする背景はどこにあるのか。自民党の憲法改正案にその解があった。
ここで、自民党憲法改正案と日本国憲法の前文を見てみよう。
自民党憲法改正案前文
日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴いただく国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。
日本国憲法前文
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
日本国憲法では、主権が国民にあることをハッキリと宣言している。しかし、自民党案では、主権についてはなにも述べられていない。ただ、前文の最後のセンテンスを要約すると「日本国民は、国家のために、この憲法を制定する」となる。自民党の主権への考え方が見えてくる。すなわち、国家のために国民がいる。暗に主権は国家にあると言っているに等しい。そして、国家の実態は、権力者(一握りの政治家、官僚)と一握りの企業であり、全体主義国家の憲法にするということになる。
全体主義を許す憲法は、独裁国家を生む。
私はなにがなんでも憲法改正に反対し、護憲を主張する積りはない。曖昧な条文は変えればいいし、新たに追加しても良いと思っている。自衛隊を軍隊と認めても良いと考えている。それに即した条文に変えても良いだろう。ただ、平和主義、国民主権、立憲主義といった基本的な考え方は変えてはいけないと考えている。その意味では護憲の立場だ。
それにしても、日本国憲法は、読み物としても素晴らしいと思う。特に前文は感動する。こういった憲法を持っている日本国民を誇りに思っている。
日本国憲法を読みやすくしPDFにしてアップした。さして長いものでもなく直ぐに読める。印刷して読んでもらうのもよいだろう。( 日本国憲法.pdf をクリック)
加えて、自民党のHPにあった改正案(日本国憲法と改正箇所が対比されている)もアップした。参考までに見てもらえればと思う。( seisaku-109.pdf をクリック)
日本を全体主義の独裁国家に向かわせるのか、国民主権、立憲主義の民主国家に向かわせるのか。次回の選挙からは日本の有り様をどちらにするかを選ぶ選挙になっていくだろう。そのためにも、現与党に対峙して、野党勢力が結集してくれることを望んでいる。
金森