平成25年度税制改正に関する法律「所得税法等の一部を改正する法律」が平成25年3月29日に、国会(第183回)で可決・成立していた。
この改正の大義名分は、「相続税の格差是正、富の再分配機能強化の観点から、基礎控除を引き下け、税率構造等の大幅な見直し」だった。
そして、今年平成27年1月1日に施行されている。
まずは、どう改正されたかを見てみよう。
相続税の基礎控除 (相法15条)
改定後の相続の基礎控除額が改正前の6割となっている。基礎控除とは基礎控除額までの相続はは無税ということだ。
この改正で、被相続人が地価の高い都市部に自宅を所有しているだけでも、改正後の基礎控除額を超えてしまい、課税対象者となる場合などが想定されることになる。
改正前 | 改正後 | |
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定額控除 | 5000万円 | 3000万円 |
法定相続人比例控除 | 1000万円×法定相続人の数 | 600万円×法定相続人の数 |
相続税の税率構造 (相法16条)
高額の遺産取得者を中心に相続税の負担を求める観点から、税率区分が6段階から8段階に変更され、6億円超の部分については最高税率が50%から55%に引き上げられ、また、1億円超3億円以下の部分で40%とされていた税率は、2億円超3億円以下の部分については45%に引き上げが行われることになる。
改正前 | 改正後 | |||
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法定相続分に応じる取得金額 | 税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 |
1000万円以下 | 10% | ー | 10% | ー |
1000万円超から3000万円以下 | 15% | 50万円 | 15% | 50万円 |
3000万円超から5000万円以下 | 20% | 200万円 | 20% | 200万円 |
5000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1700万円 | 40% | 1700万円 |
2億円超から3億円以下 | 40% | 1700万円 | 45% | 2700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4700万円 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 50% | 4700万円 | 55% | 7200万円 |
ひと言でいうとすれば、相続でより多くの税金を徴収する、増税と言うことだ。
この改正で、親からの相続で、多額の借金を抱え込んだり、今住んでいるいる家から出て行かざるを得なくなって、借家住まいといったことになる人も出てくるかも知れない。
あるいは、子どもたちに残した積りの財産で、子どもたちに借金を負わせてしまう結果になる人が増えるかも知れない。
そんなリスクを少し話してみたい。
まず、被相続人から相続するのは、負の財産も相続する。法律用語では「単純承認」というが、負の財産も含め全ての財産を相続するということだ。
もちろん、負の財産を相続しない「相続放棄」といった方法もある。負の財産も含め、全ての財産を放棄するというものだ。今、住んでいる家が被相続人の財産であれば、相続人はその家から出て行くことになる。
法改正前であれば、相続人が妻と子2人の場合、控除額が8千万円であり、あまり気にかからなかったと思う。これが4800万円しか控除されないとなると話が違ってくるだろう。
一方、貯蓄を銀行に預けていても利息が無いに等しいので、将来の為にと株式や株式ファンドなどの金融商品にしている人も多いのではないだろうか。これもまた、相続という面からのリスクがある。
株式など金融商品の価値(金額)は、被相続人が死亡した日だ。もし、死亡した日の次の日にリーマンショックなどが起こり、株式が暴落して相続した株が紙切れとなったとしても、死亡した日の株価で評価され課税の対象となる。
生命保険の受取人が特定されいるは場合は、払い戻し金は相続税の対象にはならない。ただし、「法定相続人」となっている場合は、被相続人の財産とみなされ相続税の対象になる。
ただ、借金などの負の財産を相続人が負担できる範囲で相続するという「限定相続(限定承認)」といった方法もある。この方法で、今住んでいる被相続人の家だけを相続するといった方法もある。
いずれにしても、親からの財産をどう相続すかるかもさることながら、自分の子にどういった形で財産を残すのかを考えておかないといけない歳になってきたようだ。
相続に不安があれば、弁護士、税理士、司法書士、行政書士や税務署などの専門家に相談して、考えて置くのがよさそうだ。
金森