東洋経済ONLINEに北陸新幹線に関する記事が掲載されている。開業初日を取材し、感じたことをまとめたレポートだ。その記事の中でも特に気にかかった箇所を引用して紹介する。
まず、北陸新幹線開業で関西圏と富山、金沢間に乗り継ぎが生じることについては、利用客数や運賃、時間など、具体的な数値を示しながら、次のように分析している。
北陸新幹線の開業で、首都圏から富山・金沢間は、越後湯沢、長岡、米原などでの新幹線と在来線特急の乗り継ぎが解消されたが、大阪・名古屋方面から高岡・富山方面へは逆に金沢での乗り継ぎが生じた。
ダイヤ改正前後を比較してみると、例えば大阪から富山間は約3時間15分、8730円(通常期に普通車指定席を利用した場合)であったのが改正後、約3時間5?10分、9430円となった。700円、高くつくようになったのに、さほどのスピードアップにはならず、乗り換えの手間も増えた。
これには関西の経済界から、「東京一極集中が余計に進む」と不満の声も上がったようだ。しかし、大阪・京都から北陸方面への需要は、金沢で大きな段差が生じていたのも事実だ。改正前、大阪から富山・魚津間直通の「サンダーバード」は1日15往復あったが、それらの列車でもかなりの数の乗客が金沢において乗降していたのを、何回も見ている。
国土交通省が行っている「旅客地域流動調査」では、平成24(2012)年度における、大阪府と石川県、富山県の相互間の旅客輸送人員(JR利用客)は、大阪府から石川県が67万600人に対し、大阪府から富山県が37万6500人。だいたい9:5ぐらいの割合となっており、私の実感を裏付ける。
関西から富山の流動は、対石川県と比べて少ないからと割り切られたのか。ちなみに同じ統計によると、東京都から石川県は39万4700人、東京都から富山県は44万8400人(いずれもJR利用客のみ)である。
北陸新幹線開業に伴い北陸本線の金沢から富山間は、第三セクターの「IRいしかわ鉄道」と「あいの風とやま鉄道」(両鉄道の境界は県境)の路線となり、JR西日本の路線ではなくなった。このため、従来の「サンダーバード」の利用客は自社の路線である北陸新幹線へ誘導したいという論理も、JR西日本が民間企業である以上、正当なものであろう。
建設的に考えるのなら、運賃・料金を北陸新幹線開業前のレベルに抑えるための、何らかの割引があってもよい。サービスダウンは、できるだけ補わなければならない。
一方、地元自治体主導で設立された第三セクター鉄道も、JR西日本に遠慮することはない。IRいしかわ鉄道の列車は、金沢駅の在来線ホームに発着し、JR在来線列車との間に乗り換え改札はない。あいの風とやま鉄道へも直通する快速「あいの風ライナー」は、金沢から富山間を45分程度で走破しているから、23分の「つるぎ」との所要時間差は約20分。「サンダーバード」「しらさぎ」接続ダイヤとすれば、新幹線駅から離れた石動(小矢部市)、高岡、小杉(射水市)へなら、三セク経由が有利になるケースも出てくるだろう。
また、金沢駅の鼓門などについて、私が感じていたと同じようなことを書いて、レポートの結びとしている。
また、同じ兼六園口には、木造の巨大な「鼓門」が駅への歓迎ゲートのように立っている。伝統芸能で使われる鼓を模したもので、2005年に完成した新しいものだが、今や金沢のシンボルでもある。
これらの建物は、駅としての機能に直接関わるものではない。つまり、無くても、列車への乗降には何ら差し支えるものでもない。しかし、存在していれば心が豊かになる。それが文化というものだ。
慌ただしい日常から離れることを目的とするのが「旅」ならば、金沢のこうした文化は、来訪の目的として心に大きく作用することであろう。北陸と北陸新幹線の今後を、暖かく見守っていきたい。
北陸新幹線、その実力と残された課題とは?
開業初日に取材をしてわかったこと
http://toyokeizai.net/articles/-/63933
金森