先週の27日からロード・ショー公開されているウイル・スミス主演の映画「幸せのちから」は、いままで観たサクセス・ストーリと一味違っていた。
主人公は、実在の人物で、名前はクリス・ガートナーさん。現在は、ガートナー・アンド・リッチ証券会社のオーナーである。また、現在のガートナーさんは高級ブランドのスーツに身をくるみ、マイルス・デイビスのレコードであふれる三軒の豪邸のオーナーであるともいう。
彼は、若い頃、路上駐車違反の罰金(千二百ドル=約十二万八千円)未納で刑務所に十日間服役。出所後は、株式ブローカーの見習いとして子供と一緒にホームレス生活を送る。貧困者用の給食施設で食事を貰いながら、夜は息子と地下鉄や空港のトイレで寝泊まりしていた。
そのようなギリギリの生活の中での株式ブローカーの見習いであったが、一つのチャンスを活かして実績をあげる。その実績が、大手証券会社のトップに認められ、キャリア・アップすることになる。
今まで観てきたサスセス・ストーリは、成功する過程を描き、見ている者を痛快にさせるものが多かったが、この映画は、大手証券会社のトップに認められるまでの苦労の時代だけを描いている。
後に彼は、当時のことを振り返り「私はホームレスだったが、ホープレス(希望がない)ではなかった」と語っているのが印象深い。この言葉を聞いて、映画の中に描かれる彼の生き様を振り返ってみると、なる程と思える。
主人公が、ホテルでテレビを見るシーンがあった。そのテレビ画面の中で、レーガン大統領が経済状況を説明していた。丁度、1980年代の始めころではないだろうか。当時のアメリカの経済状況は、スタブレーションで苦しんでいた時代である。あれから米国はレーガノミックスでスタブレーションから脱却して復活する。まさに、米国の夜明け前の時代である。逆に、日本はバブルの時代へと突き進み、パブル崩壊となって、現在に至る。
映画を見ながら、あの頃はどうしていただろうかと、自分の生き様とダブらせてしまう。映画で描かれる出来事を見ながら、あの時代を懐かしく思うと同時に、感慨深かった。