私の勤務する学校は、一般に、あまり知られていませんがこぢんまりと「プロの調理人を育てる機関」(養成期間2年制)として15年の歴史を重ねています。高卒者のための公立の調理師養成所は全国に類を見ない学校です。
先週実施された今年度の卒業実技試験についてPRしたいと思います。
卒業学生は48人。23日に22人が日本料理、24日に10人が中国料理、25日に16人が西洋料理を、それぞれ、自分の得意とする分野で腕をふるいました。
作品は校内に終了後、丸1日、展示公開しました。展示が目的ですので、料理は食べません。
試験官であるホテルなどの講師調理長は、できあがった料理ばかりでなく、作業過程も厳しく採点します。
まず日本料理の完成度の高かった学生の作品を紹介します。
日本料理では天然物の鯛の姿造りと、より人参3つ以上が課題です。
鯛の皮がうまく引けていること。濃いピンク色に雲がかかったようにうっすらと白い皮目が残っているのがよい引き方です。造りの角がしっかり立っていることなどがポイント。
中国料理は伊勢エビの冷凍のものクリーム煮と、トマトの花切りが課題。
ぷりぷりとした伊勢エビに仕上げること、クリームの艶、トマトの繊細な切り具合と花形、伊勢エビを豪華に盛り付ける工夫など、これもなかなか奥深い料理です。
西洋料理は鴨ステーキオレンジソース・人参のシャトーのグラッセが課題。鴨の内部の焼き具合がほんのり「レア」であること、オレンジソースの煮詰め方や、色が適切であること。人参のシャトーの形がきれいになっていて、グラッセの艶、柔らかさなどが評価されます。
それぞれ課題に対して、他に2品献立を自分で考え、片付けもすべて含んで100分で仕上げなければなりません。課題料理と自由献立のバランスももちろん大切です。なお、この献立は、事前に試験官に提出しなければなりません。
2年間調理を学んだとしても、なかなかここまでたどり着くのには大変です。
生徒たちが無事作り終えたとき、2年前の幼い姿と重ね合わせ感慨ひとしおです。教師の醍醐味でもあります。
マジメな学生は冬休みに何度も何度も練習して頑張り、試験に臨んでいます。
さて料理が美味しく仕上がっても器やテーブルコーディネートがうまくいっていないと料理は完全とは言えません。
間際まで食器、ナイフフォーク、箸、テーブルクロスやマット選びに余念がない48人の卒業予定者たちでした。でも実は、彼らはまだ筆記による卒業試験が残っています。
私にとって、彼らのテーブルセッティング作業を手伝うのも、また、楽しいひとときでした。
東京や大阪にも調理師養成の専門学校が多々ありますが定員200人とか120人では、すべての学生がこれほどまで時間をかけて卒業実技試験はできないでしょう。
その点、少人数であれば、卒業まで行き届いた指導が可能です。しかし、施設設備は都会や私立の専門学校にはかなわないのが実情です。でも、日本で一番、費用をかけずに「調理師免許取得可能」な学校なのです。
関心のある方どうぞ、2次入試に、まだ間に合いますので知人にお知らせください。
大学卒もいれば、やり直し組の社会人、定年退職後入学した人も学んでいるユニークな機関です。
最後の写真は西洋料理の評価委員であるレストラン小西オーナーシェフから講評を受けている学生の写真です。