‘いけばな’と聞くと先ず、想像するのは、剣山に木や花を刺して生けてある花ではないだろうか。私も、剣山を使って、生ける‘いけばな’から入り、剣山を使う事を当たり前のように思ってきた。勿論、今も使っている。剣山は思った形に花をアレンジできるとても便利な道具である。
しかし、最近、剣山という針の山に、花をグサリと刺すという無粋な行為が好きでなくなってきた。もともと、‘いけばな’には「投げ入れ」と呼ばれる手法がある。花瓶や籠に、直接挿して、花をアレンジする手法で、剣山のように木や花等の素材を確実に固定できない分、少し上級者向けとなる。
初心者の頃は、素材が思うように留まってくれなくて、「投げ入れ」のお稽古は好きではなかった。ところが、経験を積んでくると、不思議と素材が思ったところに留まるようになった。今では大概のものは思うように留めることが出来る。
そうなってくると、剣山を使うより、花瓶に直接入れる「投げ入れ」の方が、好きになってきて、最近は、ほとんど「投げ入れ」で生けている。
写真の作品は、カラー2本、シンビジューム1本、モンステラ1本を使って、青磁の花瓶に「投げ入れ」で生けてみた。僅かな数の素材で、広い空間を飾ることが出来るのも、‘いけばな’の特徴の一つである。特に、「投げ入れ」では入れ物(花瓶)の存在が大きいので、素材の数が少なくても、結構、様になる。素材の費用も馬鹿にならないし、そんな理由も手伝って、つい、「投げ入れ」にしてしまい、最近は剣山の出番があまりなくなってしまった。