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Vol-5
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裁判官は、真っ暗な「舞台」の前に座っています。
何も、見えません。
目を見張り、耳をたてています。
と・・・・左の方から、何やら、声が聞こえる・・・
裁判官、裁判官!!
私は原告です。
真っ暗な舞台の上には「虎」が、いるのです。
舞台の上にいる動物は「虎だ」という判決をして下さい。
と・・・・右の方からも、声が聞こえてきた・・・
裁判官、裁判官!!
私は被告です。
真っ暗な舞台の上にいる動物は虎だと言う原告は嘘を言 っています。
舞台の上にいる動物は「豹」なのです。
原告が求めている「舞台の上の動物は虎だというような判決はしないで下さい。
裁判官の独り言
・・・ふーーん、そうなんか・・
・・・虎がいるのか、豹がいるのか、それが争いの内容か・・わかった
・・・それで−−−
原告
裁判官、裁判官
私が懐中電灯で、照らしている部分を、見てください。
この「しま模様」を・・・・・
このしま模様は、舞台にいるのが「虎」である証拠です
・・・
裁判官独り言
被告
裁判官、裁判官
私が懐中電灯で、照らしている部分を、見てください。
この「点、点の模様」を・・・・・
この点、点の模様は、舞台にいるのが「豹」である証拠です・・・
裁判官の独り言
原告は、「腹の部分」ばかり、照らしよるなぁ
顔の部分も照らしてくれると、わかるのになぁ・・
裁判官
原告、被告とも、もう照らすところはないですか・・??
それでは、終結して、次回に判決します。
判決
注書の説明
注1について
原告は、訴状において、裁判所に求める「判決の内容」記載しなければならない。「舞台の上にいる動物は虎だ」=という記載部分である。これを「請求の趣旨」という。例えば、金銭の返還請求訴訟のような場合では、「被告は原告に対し、金1000万円を支払え」というような記載である。
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注3と注2について
−注3
原告が裁判所に求めた判決内容に対し、「被告が裁判所に求める判決内容」のことを、被告の、「請求の趣旨に対する答弁」といいます。「舞台の上の動物は虎だというような、判決はしないで下さい」という部分である。
この答弁をしないと、「被告は原告の言い分を認めたもの」として取り扱かわれる場合があります。金銭の返還請求訴訟における「原告の請求を棄却する、との裁判を求める」という記載部分です。
−注2
被告が、単に「原告の言い分」を認めない(否認する)だけではなく、積極的に理由を述べる場合があります。「舞台の上にいる動物は豹なのです」という部分である。このように、原告の言い分を認めないだけではなく、その理由を積極的に言う場合を「積極否認」といいます。
積極的に理由を述べることは必ずしも必要はありません。原告の言い分を認めるだけの証拠がなければ勝訴するからです。
しかし、裁判所に自分の言い分をより、理解して貰うためには、積極的に理由を述べる方がいいでしょう。
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注4について
原告は「虎だ」といい、被告は「豹だ」と言っています。
この争いが、本件の裁判のテーマとなるわけです。
舞台の上にいる動物について、「虎である」又は「豹である」という判決をすれば、原告と被告の争いに決着をつけることができるのです。
原告と被告の争いが「虎か豹か」という内容であるにもかかわらず、裁判所が「舞台の上にいる動物は、ライオンである」というような判決をしても、原告と被告の争いに決着をつけることができません。
従って、裁判所は、原告と被告が主張し合っている紛争の内容から、離れて判決してはいけないこととなっています。「舞台の上にいる動物は、ライオンである」というような判決はしてはいけないこととなっています。
例え、裁判官が「舞台の上にいる動物はライオンである」と思っても・・・・・。このような制度を民事訴訟法上、弁論主義と言っています。
このような制度が(合理的な存在理由があるのですが・・・)採用されていることから、民事訴訟は、素人の人から見ると若干専門的、技術的であると言われているのです。
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注5、6及び7について
さきほど、説明しましたように、裁判官に(声をだして)自分の言い分を言って、本件裁判の争いがどこにあるのか、何を裁判所に判断してもらうのか、というようなことを聞いて貰うことを「主張」といいます。
通常、訴状、答弁書、準備書面というような表題の書面に記載して、裁判所に提出します。
−原告
−私が懐中電灯で、照らしている部分を、見てください
−この「しま模様」を・・・・・
−このしま模様は、舞台にいるのが「虎」である証拠です・・・
−被告
−私が懐中電灯で、照らしている部分を、見てください
−この「点、点の模様」を・・・・・
−この点、点の模様は、舞台にいるのが「豹」である証拠です・・・
このように自分の主張が正しいということを裁判官にわかってもらうために、舞台の上の一部分を懐中電灯で照らして裁判官に見て貰うことを「証拠の提出」といいます。
懐中電灯の照らし方(証拠の提出)が、まずいと、裁判官に自分の言い分を認めて貰えないことがあるので、民事訴訟においては大切なことです。
この場合、証拠の提出、すなわち懐中電灯は、原告と被告しか持っていません。裁判官は懐中電灯を持たされていないので(民事訴訟の場合)、原告や被告の照らしとたところだけしか見れないのです。自分で懐中電灯を照らす(証拠を探す)ということは、原則としてできないこととなっているのです。−−−注7
先ほど、述べましたように、紛争の内容は原告及び被告の主張により決められることとなっていますので、被告がいくら一生懸命「舞台の上にいる動物が豹であること」がわかるように懐中電灯(証拠の提出)をうまく照らしていても、被告が「舞台の上にいる動物は豹である」ということを、自分の言い分(主張として)として言っていないと、裁判官は「舞台の上の動物は豹だ」と思っても「舞台の上の動物は豹である」という判決はし
てくれないこととなっているのです。
例え、証拠を出していても、自分の言い分(主張)を主張しておかないと裁判所は採用してくれません。
声に出して裁判官に言うこと(自分の言い分を主張すること)とうまく懐中電灯を照らすこと(証拠の提出)が、できて初めて、自分の望む判決をして貰えるのです。
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−−続く−−
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