労働債権の取り扱い
一 民法
民法においては、労働者の労働債権の全額について、一般の先取特権が認められている。
(雇用関係の先取特権)
民法308条 雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。
二 破産法
破産法では、破産手続き開始前の原因に基づいて生じた労働債権のうち
イ 未払い給料請求権については、破産手続き開始前3ケ月間のもの
ロ 退職手当請求権については、退職前3ケ月間の給料に相当する額のもの
を、財団債権として、保護している。
(使用人の給料等)
破産法149条 破産手続開始前三月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする。
2 破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当の請求権(当該請求権の全額が破産債権であるとした場合に劣後的破産債権となるべき部分を除く。)は、退職前三月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前三月間の給料の総額より少ない場合にあっては、破産手続開始前三月間の給料の総額)に相当する額を財団債権とする。
三 未払賃金の立替払い制度
「賃金の支払の確保等に関する法律」(以下「賃確法」という。)に基づき、企業が「倒産」したために賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、その未払賃金の一定の範囲について、独立行政法人労働者健康福祉機構(以下「機構」という。)が事業主に代わって支払う制度があります。
詳細は、下記URLを参照して下さい。
http://www.rofuku.go.jp/kinrosyashien/miharai.html
なお、解雇予告手当は、対象外とされています。
四 破産管財手続きの運用と書式(大阪地方裁判所・大阪弁護士会新破産法検討プロジェクトチーム編・新日本法規出版)
未払い給料、退職金及び解雇予告手当について
1 財団債権又は優先的破産債権となる
2 信用失墜時の混乱を最小限度にとどめ、財団散逸の共益的費用となる
ことから、債務者の財務状況を勘案して可能であれば、破産手続開始前の弁済が妥当である。
労働債権については、上記のように法令で、一定の保護が与えられている。
しかし、法令による保護以上に、実際上意味を持つのは、上記大阪地裁のような運用指針であろう。 なぜなら、破産会社の資産状況によっては、破産申立前段階で、申立代理人による労働債権の弁済ないし一部弁済が期待できる場合があるからである。
なお、労働債権について、財団債権として認める範囲に関し、大阪地裁と東京地裁で、その取扱が異なるようである。「賃金」の解釈の差違によるのかもしれない。
五 源泉徴収所得税、特別徴収地方税
源泉徴収所得税は破産会社所在地の税務署管轄であるが、特別徴収地方税は各従業員の住所地所在の税務署管轄である。
投稿者 goemon : 09:43 | トラックバック(0)