罪と罰(個別量刑の検討): 2004年10月アーカイブ
「刑事訴訟の仕組み」付録
行為旋盤機の内蔵記憶回路に入力されていた作業用プログラムを消去又は改ざんし、旋盤機の電磁的記録を損壊し、自動稼働を不能にし、製品製造業務を妨害
結果
- 高圧バルプ用継ぎ手の製造不能
- 罰金30万円
- 法定刑は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(刑法234条の2)
- 勤務会社に対するうっぷん晴らす目的のようであるが、公刊物未搭載のようで、詳細は不明
- 裁判所は、罰金刑を選択したが、その理由、詳細も不明
- ただ、罰金30万円という量刑から推測すれば、消去又は改ざんされたプログラムの復旧が、さほど困難ではなかった事例かもしれない。詳細不明である。
「刑事訴訟の仕組み」付録
行為自宅のパソコンを使って、「明日、大阪のほうの小学生等を殺害しまくります」と「2ちゃんねる」に書き込み、翌7日、同府内の3小学校の授業や職員会議を中止させた
結果
- 大阪府内の3小学校の授業や職員会議を中止させた
- 懲役2年、執行猶予5年
- おびえて体を震わせながら下校した小学生もいた
- 付属池田小事件があっただけに、府下公立小学校の63%で集団下校する重大な結果を招いた。
- 陰湿で卑劣な犯行
- 前科なし
- 池田小学校事件を連想させる悪質な犯行
- 前科なし
- しかし、猶予期間が最長の5年というのは、裁判所の怒りの現れ
- 執行猶予期間というのは、本来的な刑罰ではないものの、刑罰を補完するものとしても、実務上、運用されているか
「刑事訴訟の仕組み」付録
行為某技術者教育センターOC及び実習用ATM機等を利用して、プラスチック板8枚の各磁気ストライプ部分に、某銀行の預金管理用の電磁的記録をそれぞれ不正作出
9回にわたり、7ケ所、8銀行等のATM機を作動させ、預金管理事務処理の用に供し
上記各ATM機から合計362万5000円窃取
結果
- 現金362万5000円窃取
- 電磁的記録を不正作出
- 懲役2年6月、執行猶予4年
- 経済観念乏しく、収入に見合わぬ支出をして、サラ金、ローン返済に追われていた
- CPについての専門的知識と技術を使用
- キャッシュカードの構造を解析して、正規の暗証番号と関係なく他人の預金口座から預金を引き出す方法を解明
- 合計362万5000円の多額の金員を窃取
- 勤務するCP関連会社の技術者研修期間中を利用し、実習用の機材を利用
- 女装して発覚防止を企図し、用意周到
- 被害銀行きキャッシュカードシステムの変更を余儀なくされ、人的、物的負担は多大
- 電磁的記録の正確性に対する不安を社会に与えた
- 一般予防の見地から、厳しい処断必要
- 反省
- 被害金額全額弁償済み
- 前科前歴なし
- 処断刑は-包括一罪・科刑上一罪で-10年以下の懲役
- 被害金額が多額
- 行為態様等が悪質
- 被害の大きさ、行為態様の悪質性等が-東京地裁平成元年2月17日判決(懲役1年4月、執行猶予3年)-と異なるか
- それが、量刑上の差違に現れているか
- このふたつの裁判例から、電磁的記録不正作出、供用、窃盗という犯罪についての、ある程度の量刑予測が可能か
「刑事訴訟の仕組み」付録
行為- 勤務先同僚のキャッシュカード窃取
- 勤務先PC利用して、磁気ストライプ部分を他のカードに複写して、電磁的記録を不正作出
- ATM機から現金8万円窃取
- キャッシュカード及び現金8万円窃取
- 電磁的記録を不正作出
- 懲役1年4月、執行猶予3年
- 動機に酌量の余地なし
- 職業的な自己の知識、技能を悪用した計画的かつ巧妙な
- キャッシュカード等に対する社会一般の信頼を害するもの
- 深く反省
- 実父が被害弁償済み
- 被害者の宥恕と寛大処分求める上申書あり
- 勤務先会社を解雇される
- 満21歳で、若年
- 前科なし
- 実父の監督誓約あり
- 私電磁的記録不正作出罪等の法定刑は-5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 窃盗罪の法定刑は-10年以下の懲役
- 本件の主たる犯罪は-私電磁的記録不正作出罪等か-窃盗の手段か
- 窃盗後の-私電磁的記録不正作出罪等と-現金窃取は-牽連犯で科刑上一罪
- 最初の窃盗と併合罪加重で-処断刑は-15年以下の懲役
- 被害弁償済みで、宥恕、寛大処分上申書など財産犯としての有利事情あり
- 若年、解雇不利益処分考慮か
- 窃盗の量刑の多くが、1年以上2年以下からすれば、まあ、穏当か??
「刑事訴訟の仕組み」付録
行為不特定若しくは多数の者の用に供される場所である広島市a区内の路上において,けん銃を発射し,
引き続き,近くの路上において,被告人運転車両の前を外国人3名に横切られて,目が合ったことなどから激高し,1名に対し,未必の殺意をもって,けん銃を発射して命中させ,全治約1か月間を要する傷害を負わせたほか,他の2名に対し,至近距離からけん銃の銃口を向け,凶器を示して脅迫し,
それらの際,けん銃を適合する実包とともに携帯し,
同日ころ,覚せい剤を使用した
引き続き,近くの路上において,被告人運転車両の前を外国人3名に横切られて,目が合ったことなどから激高し,1名に対し,未必の殺意をもって,けん銃を発射して命中させ,全治約1か月間を要する傷害を負わせたほか,他の2名に対し,至近距離からけん銃の銃口を向け,凶器を示して脅迫し,
それらの際,けん銃を適合する実包とともに携帯し,
同日ころ,覚せい剤を使用した
結果
- (拳銃発射)
- (銃口向け脅迫)
- (拳銃、実包所持)
- (覚せい剤の使用)
- 全治約1か月間を要する傷害
- 懲役10年
- 一連の犯行は,人命を軽視したいずれも危険極まりない悪質な犯行
- その動機や態様に酌むべき事情は全くない
- けん銃で撃たれた被害者が,一命を取り留めたのは偶然の結果
- 同人が受けた身体的,精神的苦痛は甚大
- 脅迫された被害者2名の恐怖感も到底軽視することができない
- 繁華街の路上で合計2発の銃弾を発射しており,周囲に及ぼした危険性も甚だしい
- 被告人は,長く暴力団組員として活動していたのであり,粗暴犯や覚せい剤取締法違反の罪によるものを含めて前科が9犯あり,規範意識が相当に低下している
- 本件の犯情は悪質であり,被告人の刑事責任は重大である
- 殺人の犯行は未遂に終わっていること
- けん銃を提出して自首したこと
- 被害者3名に対し,慰謝料を支払って示談が成立しており,脅迫の被害者2名から宥恕を得ていること
- 本件犯行自体については,認める供述をして,謝罪の姿勢を示し,今後は暴力団とは関わらないと誓っていること
- 内妻や知人らが被告人の更生に向けた協力をすると申し出ており,多数の嘆願書をとりまとめていること
- 典型的な、暴力団構成員による、暴力団的?犯行か
- 拳銃2発発射は重罪
- 前科9犯は、論外か
- 同種前科あるよう
- 一般の?殺人既遂なみ?の量刑だが、やむを得ないか
- **一般論として、暴力団構成員は示談する場合が多い-示談に必死になる
- **一般論として、暴力団構成員は脱会を約束するが--9犯では、過去に嘘のべているよね??--信用されないよね??
「刑事訴訟の仕組み」付録
行為自分が暴行した女性(44歳)が警察に通報したことを逆恨みし、服役後に刺殺
結果
- 1人死亡
- 死刑
- 特異な動機による誠に理不尽で身勝手な犯行
- 計画性が 高く、強固な殺意に基づいており、冷酷、残虐。社会に与えた影響も大きい
- 殺人罪で1977年(昭和52年)に懲役10年に処せられた前科がある
- 死刑判決は、裁判所が述べるように、ある意味、当然か
- **これで死刑でなかったら,被害者は浮かばれないか
- **法治への挑戦的犯行か--これは叩きつぶす必要があるか
- 殺人を2回すれば、ほぼ死刑か
「刑事訴訟の仕組み」付録
行為Aに文句を言い謝罪させるため,夜明け前の暗い高速道路の第3通行帯上に自車及びA車を停止させたという被告人の過失行為--追突事故誘発
結果
- 3名が死亡し,1名が全治約3か月の重傷
- 懲役4年6月
- 行為内容に酌量すべき事情は見あたらないように思える。
- **本件のような,自分勝手な,危険な行為は許すことはできない-相応の刑罰必要との判断か
- 傷害罪も併合
- 「3名が死亡し,1名が全治約3か月の重傷」という-結果は重大との判断か
- 3年以上5年以下の量刑が多い傷害致死の罪--にも匹敵する--量刑か
「刑事訴訟の仕組み」の付録の「主たる刑法犯罪及び特別刑法犯罪法定刑及び量刑分布」に、五右衛門さんに、随時「量刑個別検討など」を追加していただくことになった。
五右衛門さんの「量刑個別検討など」
http://www2.ocn.ne.jp/~zunou/ryokei.htm
威力業務妨害=平成16年10月22日福岡地裁判決
行為
結果
五右衛門さんの「量刑個別検討など」
http://www2.ocn.ne.jp/~zunou/ryokei.htm
これを「刑事訴訟の仕組み」の付録に収録して、「刑事訴訟の仕組み」を購読いただいているみなさんにダウンロードして、まとまった形で利用していただけるようにすることにした。
威力業務妨害=平成16年10月22日福岡地裁判決
行為
テレビ西日本に携帯電話を使って「そちらの建物は今日爆発します」と脅迫するメールを送り、約半日間、同社の業務を妨害
結果
- 約半日間、同社の業務を妨害
- 懲役1年6月、執行猶予3年 (求刑・懲役1年6月)
- ストレス解消が目的
- 大勢の人に多大な迷惑をかけた
- 警察官現職時の犯行で警察の信頼を失墜させた
- 反省あり
- 執行猶予付の場合、求刑どおりの場合が多いので、判決量刑としての価値はないか
- 威力業務妨害の法定刑は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金--法定刑真ん中の量刑
- 警察官の犯行という意味で悪質
- しかしこのような場合、失職しており、量刑に反映か