ACCS裁判一審判決に思う

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 五右衛門さんの「 IT 技術者のためのデジタル犯罪論」で、ACCS裁判一審判決に関する記事が載っている。

http://www.ofours.com/books/48/contents/archives/2005/01/accs_1.html

 その中で

(3)ア そこで,検討すると,不正アクセス行為の禁止等に関する法律2条3項は,「アクセス制御機能」が「特定電子計算機」に付加されている機能であり,識別符号が「特定電子計算機に入力され」るものとしている上,同法3条2項2号も,アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報又は指令を入力する対象を「アクセス制御機能を有する特定電子計算機」と規定しており,  アクセス制御機能の有無を特定電子計算機ごとに判断することが前提となっている。  そして,この特定電子計算機とは「電気通信回線に接続している電子計算機」をいい(同法2条1項),さらに,「電子計算機」とは自動的に演算や情報処理を行う電子装置である物理的な機器をいうのであって,  本件では,A協会がF株式会社からレンタルしていた物理的な機器である本件サーバが特定電子計算機であり,これを基準にアクセス制御機能の有無を判断すべきことは文理上当然である。
と、裁判所の判断が紹介されている。

 裁判所は、「文理上当然である。」と言っている。「法律の文脈上当然である。」と言うことだろう。法律は文章であるから法律を表現している文章の文脈に照らして判断したということであろう。

 ならば、裁判所に問うてみたい。

 この法律の前提としているところの「特定電子計算機」であるが、

 「本件では,A協会がF株式会社からレンタルしていた物理的な機器である本件サーバが特定電子計算機であり」と言っている。

 しかし、本件、A協会のホームページが、「物理的な機器である本件サーバが特定電子計算機に設置されていること」を、ホームページを見ている人々が、どうやったら判断できたというのであろうか。

 今回の判決で、裁判所は、A協会のホームページが格納されているサーバが偶々 FTP でユーザIDとパスワードで保護されていたことから、これを「特定電子計算機」と認定したということであろうか。

 しかし、裁判所は、この文理上の前提となる「ホームページを見ている全ての人達がファイルは FTP でサーバに格納しており、その FTP がユーザIDとパスワードで保護されていると理解していることが一般的である。」ことを示さなければならいだろう。これを判示できなければ、判決そのものは砂上の楼閣と言えよう。

 法律の文脈の前提を明確にできないような判決は、「文理上当然」と言ったところで無意味ではないだろうか。

 蛇足ながら、ホームページを格納しているサーバにホームページとなるファイルを格納するのに、 FTP を利用していないサーバは沢山存在する。ホームページとなるファイルをマウスでドラッグ・アンド・ドロップで格納しているサイトも山ほどあるのが現実と思う。

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このページは、弁天小僧が2005年4月 9日 22:15に書いたブログ記事です。

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