強姦,強盗,強姦未遂=大阪地裁平成16年10月1日判決

| | トラックバック(0)
行為
帰宅途中のA子を強姦
上記路上において,同女から財布1個(現金約1万9200円及び鍵等約21点在中。物品時価合計約1万0500円相当)を強奪
帰宅途中のE子を強姦
同女から,同女の差し出した現金1万円を強奪
帰宅して自宅のドアを開けようとしたG子を強姦
同女から手提げかばん1個(現金約9300円及び財布等15点在中。物品時価合計約6万3000円相当)を強奪
帰宅して自宅のドアを開けようとした同女を強姦しようとしたが,発覚を恐れて逃走し,その目的を遂げなかった
帰宅途中のJ子を強姦しようとしたが,何度も懇願されたため,強姦自体は中止

量刑
  • 懲役14年(求刑 懲役12年)

  • 本件各犯行に至る経緯・動機は,身勝手極まりないもの,全く酌むべきものがない
  • 犯行態様も,凶器の所持や暴力団との関係を装って被害者を脅迫するなど悪質
  • 結果は非常に重大
  • 各被害女性は,その無念はいかばかりか,誠に気の毒
  • 第1~第3の各被害女性は,「踏んだり蹴ったり」の状態で,その肉体的・精神的苦痛の大きさは余人には計り知れない
  • 恐怖の念が去らず,暗くなると外を出歩けなくなる,出歩くのが怖くなっている
  • 男性が近づいただけでピクッとなってしまう
  • 若い彼女らのこれからの長い人生において,本件犯行が大きな影を落とすことがないのか,誠に憂慮される
  • 第5の被害者の屈辱の思いはいかばかりか
  • 被害弁償や慰謝の措置も行っていない
  • 各被害者らが,厳重な処罰を望んでいる
  • 少年時代に同種の非行歴はあるものの,同種前科はなく,異種前科も平成4年に窃盗罪で懲役1年6か月・執行猶予4年(保護観察付)に処せられた1犯
  • 各犯行につき深く反省

  • 被告人の刑事責任は非常に重大
  • 各犯罪類型ごとに,量刑の幅の最低ラインを考える
  • 第1~第3の各犯行=性犯罪と財産犯の最も悪質な犯罪形態である強姦と強盗であって,被害者に落ち度が全くなく,かつ,被害弁償や慰謝の措置がほとんど皆無であることを重視=いずれも懲役5年を下回ることはない(酌量減軽を行うことは全く不適当である。)
  • 第4,第5の各犯行=強姦未遂であるとはいえ,強制わいせつ行為は行われており,ことに第5のそれはかなり悪質なものであることに加え,やはり,いずれも被害者に落ち度が全くなく,かつ,被害弁償や慰謝の措置がほとんど皆無であることを重視=第4については懲役1年を,第5については懲役1年6か月を下回ることはない
  • これらを合算すると被告人の刑事責任は懲役17年6か月を下回ることはない
  • 本件のように,併合罪の関係にある数罪が,いずれも人身に対する罪であって,各被害者の心身にわたる被害が相当深刻であるような場合には,あまりに過大な併合の利益を見積もることは,被害者保護の見地からして相当ではなく・・基本的には,合算刑をベースとして(但し,刑法47条や14条の制約の範囲内で),それに比較的近い範囲内で量刑を行うことが相当
  • 本件各罪に共通する強姦(未遂)罪は,女性の性的自由を侵害するというにとどまらず,女性の人格そのものを蹂躙する性質を持つ犯罪であるだけに,なお一層このことが妥当する

  • 検察官の懲役12年の求刑は,被告人の罪責やこれに基づく合算刑の最低ラインに比して,軽きに過ぎる・・その意見には到底賛同することができない
検討
  • 求刑を上回る注目すべき判決
  • 併合罪の場合の量刑について、具体的な量刑指標を判示

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 強姦,強盗,強姦未遂=大阪地裁平成16年10月1日判決

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.ofours.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/15

このブログ記事について

このページは、弁天小僧が2004年11月 9日 13:09に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「ストーカー行為等の規制等に関する法律違反,器物損壊=名古屋地裁平成13年9月6日判決」です。

次のブログ記事は「「中学生にわかる民事訴訟の仕組み」がジワリジワリと売れている」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

携帯電話用ブログURL

Powered by Movable Type 4.1

最近のコメント